2010 GPS NHK杯 2

コストナー選手、フラット選手、そして村上選手、おめでとうございます。それにしても、初戦だろうと最終戦だろうと、NHK杯と女子シングルは相性悪いようで。SPでは60点、FSとの合計でも170点を誰一人越えなかった。


ダイアン・シュミット選手(カナダ)
『ファンタジア(A.ロイド=ウェバー)』、アリソン・パーキス女史振付け
NHK公式サイトの動画より。とにかく短く次々と音楽が変わっていきすぎ。中盤はまあいいとしても、最後また突然に切り替わる。滑りにくいに決まっているし、何でこんな編集なんだろう。『ファンタジア』というタイトルにしているのだし、『オペラ座の怪人』で有名な最初と最後のパートはいっそカットすればいいのに。イメージが強すぎて無駄に引きずられる。衣装も振り付けもやっつけっぽいし、時間も余りない状況で作ったのだろうか。せっかく滑りが良いのにあまり生かせてない。



レナ・マロコ選手(フランス)
『シング・シング・シング(”ザ・マスク”サウンドトラックより)』、オーレリー・フーシェ女史振付け
NHK公式サイトの動画より、その2。ジャンプも流れを殆ど止めずに跳ぶし、ランが少し多いけどリンクもかなり一杯に使っているし、中々見ていて気持ち良かった。体力を付けて後半からよりエネルギッシュに滑れたら、もっとずっと良くなりそうだ。音楽編集も使っている部分も良い。終盤出てくるお馴染みのフレーズは少し音量を上げ、かつフィニッシュに向けてジャッジ側に向け大胆な動きを入れたらもっと良いと思う。冒頭の振りが素敵なのでぜひ。ジャンプの軸が太いせいか、どのランディングもふら付いてもったいなかった。サルコーは入ってないが苦手なのだろうか。2番目に良かったです。



ビクトリア・ヘルゲッソン選手(スウェーデン
『August Rhapsody("オーガスト・ラッシュ" のサウンドトラックより)ほか 』、カタリーナ・リンドグレン女史振付け
NHK公式サイトの動画より、その3。振付師はトム・ディクソン氏の奥さんで、スウェーデンの元ナショナルチャンピオンのようだ。彼女もジャンプ前の体勢、悪いですよね。習い始めてすぐの段階でジャンプもさせていた弊害だろうか。いかにその後滑りがキレイになろうと、動作準備含めてここだけは残るという。あと常に滑ってて疲れそうな割にアピール度は少なく、ハイライト部分であろう音楽も生かせてない、ダサい作品だなと思った。全体的に雑というか大味な選手なので、その辺をある程度はカバーしてもらいたい。



エレーネ・ゲデバニシヴィリ選手(ジョージア
オペラ座の怪人(A.ロイド=ウェバー)』、ロビン・ワグナー女史振付け
NHK公式サイトの動画より、その4。はっきり言って、金髪は合ってないと思う。衣装・髪型・日焼けからくる組み合わせのせいか、場末っぽい感じになっているというか。本来、正統派美人なのになんでだ。プログラムはこれまでにない雰囲気のもので良いと思う。ただ終盤はやっぱり例のフレーズが出てくる事からも、どうせなら別な曲の方が良かった。しなやかな腕の使い方とか、もう少し叙情的な動きも欲しい。最後のポーズは音楽とズレすぎ。あとセカンド以降のジャンプに見られる、変なタメもできれば無くしたい。



浅田 真央選手
愛の夢(F.リスト)』、ローリー・ニコル女史振付け
テンポの速さについて行けず、最初からいきなり、そして特に終盤ずっと遅れているのが気になった。元々瞬発力があまりないというか、動きそのものが遅いせいもあり、まさしく『チャルダッシュ』再びに。曲自体も、何度も激しい感情を表す部分があったり、どちらかというと男性向きだと思う。フリップジャンプの準備動作を変えたりしていたが、体が捩れたまま回転している方が気になった。出来の悪さがあるにせよ、世界選手権優勝者なのだから、もっと堂々と出来ないものだろうか。



ジェナ・マコーケル選手(イギリス)
『Voice of Violin performed (J.ベル)、弦楽のための音楽よりアレグロ (G. Faure) 』、シャネッテ・フォレ女史振付け
ジャンプの回転速度が遅く回り切れない感じですね。それはそうと、編集に無理がないのと、終盤単調な滑りをカバーするような良い作りになっていると思う。振りで緩急を付けられそうな箇所もたくさんあるが、選手自体は動きが遅い上に体力もないので、そもそも作らなかったか練習段階で本人やコーチがカットしたかのどちらかだろう。特に変な滑りでもジャンプでもないが、繊細さとか優雅さと無縁らしい。叙情的な音楽をこう淡々と滑ってしまわれるとなー。



キャロライン・ジャン選手(アメリカ)
『チェロ協奏曲ロ短調 op.104 第1楽章 (A.ドヴォルザーク)』、デヴィット・ウィルソン氏振付け
時々、やめちゃうのかな?というシーンがあった。悪気はないのだろうけど、ジャッジの心象を悪くしてしまっているかもしれない。中々良い曲なのに、特に後半はもったいないなーと思う箇所が多い。ストレートラインステップでは最後の急な盛り上がりに合わせて動きを激しく、そして続くバッククロスはもっと強く滑って欲しいとか。上半身太りという変わった状態なので、ジャンプの度に、膝や細い足首をケガしそうで見ていて怖かった。あと、ルッツの方のハイキックはそのままなのか。



キーラ・コルピ選手(フィンランド
『エビータ(A.ロイド=ウェバー)』、デヴィット・ウィルソン氏振付け
衣装いいですね。ピンクの部分はもう少し一工夫欲しいけど。やっぱり美女は、それ相応のものを着ないといけません。今回一番期待していたので、出来がイマイチなのは残念だった。ウィルソン氏の作品って、出来が悪いと何やってるのか分からないプログラムになりやすいしなあ。その一方、出来が10割に近づくにつれ、非常に完成度の高い作品にもなるが。最初の表情はとても魅力的だった。ハードだけど、欧州選手権はもちろん世界選手権の台も狙えるプログラムですね。



アシュリー・ワグナー選手(アメリカ)
『マラゲーニャ(E.レクオーナ)』、イリーナ・ロマノワ女史振付け
毎度ながら外れのない衣装だ。本人のセンスなんだろうか。それにしても、スピードのないのはもちろんだけど、一歩一歩に伸びがなさすぎる。両足滑走が多いようにも見える。加速にも時間がかかるし。大して息切れもしてないから体力ない訳ではなさそうだけれど、滑りに無駄が多いように思う。序盤を過ぎた辺りから、もう作業をこなしている印象を受けたりとか。今一つ、点や順位を上げるのに行き詰まりがある。スケーティングスキルを上げないと、どうしようもないのかも。



レイチェル・フラット選手(アメリカ)
『Oh, But on the Third Day (W.マルサリス)、十番街の殺人 (Richard Rodgers and Earl Wild )』、ローリー・ニコル女史振付け
シーンとなる演技の続く中、彼女が出てきてホっとした。そしてその期待通り、素晴らしい出来だった。突出したバランス能力を持っているのかも。スキージャンプのシモン・アマン選手みたいに、NHK特番で計測したのを見てみたい。パーンという銃声の音は笑ったが、その辺りから次のジャンプまでの振り付けは音楽とバッチリですね。しかしパフォーマンスの割りにPCSが出ないのは、ワグナー選手と同じような問題からかと。今回一番良かったです。



村上 佳菜子選手
『マスク・オブ・ゾロ(J.ホーナー)』 、山田満知子 & 樋口美穂子両女史振付け
衣装、良いなとは思えないけれど、少なくともSPよりは遥かに上。装飾に凝っててものすごく高そうだし。滑り始めに両腕をホッケー選手のように振ったり上体を思い切り倒したり、正面真っ直ぐの体勢でジャンプを跳べない、など問題が多いなと。シニアデビューであるのを考慮しても、後半グループのメンバーと見比べると、浮いているというか見劣りがした。子供の感覚で跳べる今の内に直していかないと、近い将来苦労するのでは。



カロリーナ・コストナー選手(イタリア)
『牧神の午後への前奏曲 (C.ドビュッシー)』、ローリー・ニコル女史振付け
まず、SPとFS通して一度も転ばないコストナー選手なんて!!!結構踏ん張ったというか、「転ばないぞ」という気概が良かった。もっと前からそうすれば良いのに。四肢も十分に伸ばした、見ていて本当に気持ちの良いスケーティングですね。でもプログラムは全体としてただキレイなだけで単調に感じた。ニンフ(妖精)を演じてはいるのだろうけど、終わり方といい、もう少し何か欲しい。冒頭は余韻ある、その後を期待させる印象的な振り付けなのに。そろそろ別な振付師による演技も見たい。




刈屋アナがさらにヒートアップし、バンクーバ五輪以上の(これも刈屋アナ)、まれにみる不愉快な放送だった。浅田選手への行き過ぎた擁護も、やりすぎて却って印象を下げるという訳の分からない事になっている。せっかく録画したのに、公式サイトの動画(会場音のみ)の方がいいなんて・・・。