脳科学の最前線 2


追跡No.2 --- 脳画像から心は読み取れるのか? ---


ATR-Promotionsという会社に、脳活動イメージングセンタという部署がある。ここの科学者が、視覚野の活動をMRIで読み取って、その人が何を見ているかを可視化する方法を見つけた。

対象となる人に、まずいくつかの画像を見せ、その活動パターンを記録する。するとその後は、逆に目で見た画像を割り出せるようになるという仕組みだ。精度はまだまだなので、簡単な図形でも結構推測を必要とするものの、1つの道筋は見えた状況だ。夢で見た内容も読み取れるのではないか、という仮説も立てられている。夢や心に描いたイメージについても、視覚野が使われるからだ。

一方で、2つ以上のものを同時に見たとき、脳は見たままを視神経から視覚野へ送るのではない事も分かっている。途中で加工し、興味のあるものをより強調して視覚野へ到達させるのだ。なので脳画像で見た場合、興味のあったとされる方が、答えとして出てくるらしい。


場面はハーバード大学の精神科学教室に移る。子供時代に傷を追った人々へ協力を依頼し、研究用にアンケートをしたりMRIを使った脳画像の収集をしている。分かったのは、虐待を受けた人の脳には、特徴的な変化が出ていた事だった。受けた虐待内容により、思考を司る前頭前野または聴覚野の体積が少なくなっていた。聞きたくない、見たくないという思いが、その部分の成長を阻害していたのだ。

脳の体積が増えるという、逆の例もある。道が複雑なロンドンのタクシードライバーについて調査すると、記憶を担当する海馬が大きくなっていた。それも経験の長い人程肥大化している。年齢を重ねても脳は鍛えられる事が裏付けられたともいえる。


以上から分かるのは、こんなトコロかな。
    1. 視覚野の活動パターンは個々人による
    2. 視覚野は実際に目で見た画像だけでなく、イメージ画像についても扱っている
    3. 実際に目で見た画像も、視覚野へくるまでに(主観によって)加工される
    4. 脳には可塑性があり、年齢によらずその体積を増減できる


2.〜4.はあんまり驚くような事はないな。特に4.。人生の途中で体の一部を無くした人が、それを別の部位で補えるようになる例とかゴロゴロしてるし。高齢になってから始めた趣味について、非常に高度な処まで持っていく人だっている。むしろ、サラっと流された1.の方が興味深い。なぜ同じパターンにならないのか、結論が出ないにしてもそこまでやって欲しかった。


ATR-Promotionsは、中々面白い製品出してます。どれも試作品っぽいけど、それもそのはず。国際電気通信基礎技術研究所が株主だからだ。