崖の上のポニョ 2


前回の続き。


親である自分を「リサ」と名前で呼ばせている点といい、息子(=宗介)は驚くほど躾が悪い(作中では何故か行き届いた感じのキャラとして扱われているが)。また、直接ではないにしろ、自分の子供が原因の一端といえる大災害が起きているというのに何とも思わない。以上より、見た目が若くてキレイなだけの、オツムの弱すぎるバカ親でしかない。子供らがメチャクチャにしていく日常を、正常な方向へ導くはずのキャラがこうなので、ただただ話は無秩序化していく。警察や自治体の人間が登場しないのも、変だし収拾がつかない一因といえる。そう、”責任”を担う者が誰一人として登場しないのだ。


もののけ姫』ぐらいからか、封切り前後くらいに制作過程についてのドキュメンタリー番組が放送されている。シナリオも出来てない状況なのに公開日が近づいてきていて云々、というのがいつ見ても不思議だった。決められた予算や日程の中で作るのだから、多少の遅れは出るにしても、それは細部の話である。半年を切ってもまだ一番肝心なものが決まらないような進め方をするから、ヒドイ内容になっているのではないだろうか。最低でも起承転結といった大筋のシナリオぐらいはあって、その内容でもって制作是非や公開日を決めるものじゃないかと思うが、こういうのが「巨匠監督」の弊害なんですかね。


まーこれほど破綻しまくっているのに、それでも娯楽としては見れなくもないのが宮崎監督の「腐っても鯛」なトコロなんだろう。1つだけ気に入ったのは、お約束の食事描写だ。ハチミツたっぷりのホットミルク、ハムやゆで卵入りのインスタントラーメン(チキンラーメンっぽい)、本当においしそうだった。


お約束といえば、主人公による全力疾走がある。太ももを大きく上げながらのすごく速い走りで、見てるだけでワクワクさせられてきた。今作においては、人型になったポニョが宗介の所へ行くために走るのだが、波の上でなのでそもそも意味がない。ルームランナーよろしく本人の走りで位置が変わるわけじゃないし。こういうのを見ても、パワーダウンを感じてしまって、寂寥を覚えずにはいられない作品だった。