全米男子シングルと選考結果


先月22日〜30日にかけて開催された、全米フィギュアスケート選手権の男子シングルについて。場所はノースカロライナ州グリーンズボロのGreensboro Colisium Complexで、公式サイトはこちら。地図で見ると、ノースカロライナ東海岸の真ん中辺で、グリーンズボロはその州の真ん中あたりにあるようだ。サイトの写真にある通り、中々キレイな街並みらしい。


同時期開催の欧州選手権の方が男女シングルとも残念な大会だったのと対照的に、全米はいやにこれまた男女シングルともいい試合だった。特に全米男子シングルは面白すぎ。笑った笑った。そして大丈夫か欧州・・・。女子はもう数年前からだったけれど、ついに男子までグローバルに見ると2軍の大会になった感が。正直、権威あると言うのなら、男女とも「優勝者該当なし」でも良かったようにさえ思った。
話を戻して、一番期待してなかった全米男子シングルが、最も胸熱くなるものだった。試合展開、表彰台メンバー、そしてその結果を受けた世界選手権 & 四大陸選手権派遣選考結果と。最終1つ前のグループによる素晴らしい演技の連続と、直後それにプレッシャーをかけられた最終グループメンバーらの悲喜こもごもの結末まで、本当に見応えがあった。結果は以下の通り。



全米選手権 ---
 1位 : ライアン・ブラッドリー(27)
 2位 : リチャード・ドーンブッシュ(19)
 3位 : ロス・マイナー(19)
 4位 : ジェレミー・アボット(25)
 5位 : アダム・リッポン(21)
 6位 : アーミン・マーバヌーザデー(20)

世界選手権派遣 ---
 1-3位

四大陸選手権派遣 ---
 4-6位


表彰台メンバーについて、今季ジュニアでも大活躍し波に乗っているドーンブッシュ選手と逆に国際試合に出ず充電たっぷりなブラッドリー選手は予想範疇ではあったのだけど、残る一人がマイナー選手になろうとはチラとも思わなかった(存在自体忘れていたともいう)。アボット選手かリッポン選手のどちらかになるだろうと思っていた。ちなみに、順位はこの2人のいずれかが1位で、あとの2人は予想がつかず。優勝したブラッドリー選手のFSについて、4Tが2つ共認定されていた事も驚きだが、PCSの高さにも十分違和感を覚えた。何故彼を勝たせたのか?要因について推測してみた。

  1. 昨年のバンクーバーオリンピックで金メダルを獲得している事から、男子シングルの方は多少余裕がある。
  2. 圧倒的な優勝候補のアボット選手と次点で優勝候補であったリッポン選手共に、世界選手権やオリンピックといった、大舞台の試合になると今一つ弱い(前者は11位/11位/5位/オリンピック9位、後者は6位/オリンピック参加できず)。
  3. 追い討ちをかけるようにアボット選手はふがいない演技だった。対して、直ぐ後に滑ったブラッドリー選手は4回転の失敗や多少の動揺は見られたものの、失敗後も即座に続行、崩れる事もなく最後まで演じきって見せた。
  4. ドーンブッシュ・マイナー両選手には、世界選手権を前に満足してもらっては困る。
  5. 斜陽の米国スケート界にあって、ブラッドリー選手の人気を無視する訳にはいかない(そういや、台乗りした面子は全員、古き良き時代のアメリカを感じさせる雰囲気だった気もするな)。
  6. アボット選手とリッポン選手という”ホントなら一軍”を送る事で、他国の世界選手権兼任の四大陸メンバーを、あわよくば疲労させられる。

米国スケート連盟の視点から考えれば、当然「次代のライサチェックまたはウィアー」を探しているはず。しかし、アボット・リッポン選手共、今回の結果といいやはり頼りにならない。とはいえ、博打に近いのもまた確かなので保険もかけておきたい。だから四大陸選手権の方は世界選手権メンバーそのままの女子と違って、順当なら世界選手権に選ばれそうなアボット選手、リッポン選手、そして6位の選手という選考にしたのだろう。ここ数年、世界選手権2枠続きの上、オリンピックの台まで逃した女子シングルに集中したいのもあると思う。
実際、今回の表彰台組を心底信用していたら、ワールドランキングでも28位、41位、48位の彼らに少しでも優位となるよう四大陸選手権にも行かせただろう。一番避けたいのは、強いメンバーが出るとすでに分かっている四大陸選手権で疲れてしまう事だしね。「来季ライサチェック選手やウィアー選手が戻ってくるかもしれないし、いずれにしても枠を減らしたら、次回非常にヤバイのは分かってるはずだよね?」という圧力がほっといても存在するのもある。


ところで、世界選手権の3枠を維持するには、上位2人の順位が合計13以下になる必要がある。つまり、下から見ていくと6位+7位、5位+8位、4位+9位辺りのいずれかを満たせばいい。アボット・リッポン両選手を参加させた処で、上述の理由より確立は似たり寄ったりだろう。一見すると驚きだが、四大陸と合わせて順当な選考結果かと。3月の世界選手権では、カナダのパトリック・チャン選手、そして日本および欧州から当時期に調子のいい各2選手、の合わせて5人くらいで台争いするのだろうし。頂上付近で彼らがギャーギャー言ってる間にコッソリ2人ほど入賞すれば何とかなるはず。いや、マジで頑張って欲しい。


名付けて番狂わせ隊(センスなし)。日本の選手はさすがに別として、珍しく米国男子も応援しよう。