The Hope Diamond 2


ホープの色には2つの特徴がある。通常時に青色である事ともう1つ、暗所で紫外線を当てると紫色を放つ上に、照射を止めると今度は自ら強い赤色を1分以上も発する事だ。


長い間謎とされていたが、科学技術の進歩により原子数個分からでも成分分析できる機器と、原子単位での照射が可能なレーザー装置(多分、窒化ガリウム(GaN)系半導体レーザー)が揃ったため、2010年に調査実験が行われた。言い換えると、ダイヤの見た目を損なわずに調査できるようになったので可能となった。レーザーをドリルのように使ってダイヤ底面に穴を掘り、その時に飛び散った原子を拾うのだ。分光器を使ったスペクトル出力も行っていて、実際には水色と赤色を発している事も分かった。

2年の歳月を調査実験の準備に費やしたという。少々長いように思うが、上の人から「OK」のサインをもらうためにかかった時間なんだろうか。実験後のダイヤ底面を見ると、4つもの穴が出来ていた。どれもいびつで大きさもバラバラ。明らかに学生と見える何人かに混じって老けた男性がいたので、実験のために呼ばれたレーザー照射技師なのかもしれない。それにしても、肉眼で見えないからって美意識なさすぎ。大雑把なんだか丁寧なんだか。


話を戻して、調査結果から炭素以外に、ホウ素(B)と窒素(N)を含んでいると分かった(ちなみに、おおよそ炭素 : ホウ素 = 100万 : 1の含有割合で、窒素はホウ素よりさらに少ないそうだ)。では何故これらの物質により、青色や赤色になるのか。

  • ホウ素(原子番号5、電子配置はK殻に2、L殻に3)
  • 炭素(原子番号6、電子配置はK殻に2、L殻に4)
  • 窒素(原子番号7、電子配置はK殻に2、L殻に5)

まず青色。炭素の原子配置はK殻とL殻に目一杯の2と4の電子があり、とても安定している。これに対し、ホウ素はL殻に3の電子しかないためにそもそも不安定で、可視光線を受けると、プリズムの内より赤〜緑部分を吸収してしまう。で、残った青が目に見えると。他のカラーダイヤも似たような理由から、ピンクや黄色などを帯びているように見える。

次に赤色の燐光。結論から言うと、ホウ素が窒素と結合したため。紫外線を受けたL殻のホウ素電子の内、2つが原子核からの引力を断ち切れるエネルギーを持つ状態となり、窒素の軌道へと飛び出していく(励起状態になって一時的に遷移する)。共有結合を起こしていると言った方が早いかもしれない。そして紫外線を受けられなくなると、エネルギー的にその軌道にはいられなくなるため、余分なエネルギーを捨てて元のL殻に戻ってくる。その余分なエネルギーが赤色になって見えるというのだ。赤色の燐光は他のブルーダイヤでも確認できたが、そもそも弱い上にすぐに消えてしまう。赤色を放つ長さの原因はまだ分からないままだ。


ところで上記の事実の内、”ダイヤモンドがホウ素を含む”という点は科学者らを驚かせた。中学辺りの理科でも知られる通り、ダイヤは最高の熱伝導性を持つ絶縁体であるが、その特性に加えて電気伝導性も持つダイヤができるという意味を持つからだ。半導体への応用が可能になる。現在はシリコン(Si化合物)を主に使っているけれども、常に熱対策が付き纏われ悩みの種ともなっている。携帯やパソコン内のものを始めとしたあらゆるコンピュータから、使用していると熱くなるという欠点がなくなり、大掛かりな冷却装置の搭載から解放されるのだ。高い熱伝導性と高い電気伝導性、この2つの特性を備えた人工ダイヤはスーパーダイヤモンドと呼ばれ、いずれシリコンと置き換えられると予想される。


なお、1カラットのダイヤモンドは「96億×1兆」個の炭素原子から成っているそうだ。成る程、さっぱり見当つかん。それはともかくスーパーダイヤは見たい、見たすぎる。そしてそれを使ったコンピュータ機器も。研究者の皆様、心から尊敬しています。休日はもちろん、寝る間も、そして食べる間も惜しんで頑張ってくださいね。


※上記の記事は、放送でいくつか疑問を感じたため、他の資料もみて組み直しています。