NHK杯観戦レポ#1-女子シングル-



NHK杯には、女子シングルを最大の目当てに行きました。が、蓋をあければ、一番面白くなかったのが女子シングルでした。外国人選手は相手にならないし、表彰台組みは表彰台組みで全員パッとしないし・・・。


キム・チェファ選手
【SP】非常に大人っぽい出立ちで登場だが、表情がちょっと乏しいかなと思う。試合準備について、アナが一人でやるので偉いですねと褒めていたが、もう18歳なので却って失礼だろう。FSとも合わせて、ルッツやフリップを1度も跳んでいないのが気になる。
【FS】出場前、コーチにリボンを結わえ直してもらってました。気合いを入れてもらってただけかもしれませんが、中々可愛かったです。失敗の度に入る「ガンバー」という声に、何だかイラついている感じが。何だかんだで韓国も着々と選手が増えていってるよう。演技全体が平坦な印象なので、緩急をつけるなりして、メリハリを入れるといいように思う。


レスリー・ホウカー選手
【SP】最初のLSpはLv.2とはいえ、殆どのジャッジから加点のある、いいスピンだった。スピンが得意分野のようなので、これを中心にした演技構成にすると見栄えもするだろう。かなりミスがあったのだが、キスクラでも特に悔しそうでもなく、不思議な選手だ。
【FS】SPといい、何度ジャンプ失敗しても、全く動じずに滑れるのはいいのだけど・・・。いくらなんでも、回数多すぎ。というより、減点されてないジャンプが1つもないんですけど。振り付けのマズさをまず改善したいかなと。せっかく明るい感じの選手なのに、長所が生かされてない。


トゥグバ・カラデミル選手
【SP】トルコの選手って珍しい。メキシコの選手といい、環境も良くないだろうに、頑張ってるなーと応援したくなる。アンカラにあるスケートリンクって想像しずらいし。名前もどう読めばいいのかな。滑りについては、まず細かい所で工夫のあるのがいい。要素の後、ほぼ必ずスピードが落ちてしまうのを何とかしたい。それにしても、こらアナ!スロー再生無視して浅田選手に移ろうとしたろう。ふざけんな。キスクラで何をマイクに向かって話してるんだろうか。NHKなんだから分かる職員くらい居るだろうに。無駄に高いチケットだよね本当。
【FS】ルッツとループが苦手なようで、SPから1度も跳んでない。とにかくジャンプの減点がひどいので、テコ入れしたい。直前の選手が最後の挨拶をしている中、リンクへ出ようとしている時に、観客の投げたヌイグルミが当たってしまう事故があった。が、笑顔でリンクにそのヌイグルミを投げ入れており、周囲で好感度がアップ!トルコにスケートを広めると共に、また日本へ来て下さいね。


ジェナ・マコウケル選手
【SP】イギリスのリンク事情は相当悪いらしい。そこは日本と同じだが、こちらはその影響か選手が育ってないですね。
【FS】ジャンプのすっぽ抜けの度に、緊張感が悪い意味で解けていった感じでした。SlStの最後でも転倒するし。Warm-upでもダントツの転倒率を誇ってた・・・。スピンはそれなりに得意そうだが、全体的にテコ入れが急務か。


クリスティン・ズコウスキー選手
【SP】17歳!?には見えない。随分大人っぽいなあ。衣装はFSより、断然こっちの方がいい。FSのは彼女の欠点をより大きく見せていたように思う。
【FS】彼女のジャンプはすごい。巻き足の癖があるだけでなく、極端な猫背姿勢で、何と軸が2つあるまま回転している。二槽式洗濯機を知っている人は、ちょっと思い出してもらいたい。たまに脱水中ガッタンゴットンと音がして、まともに機能しない事があったと思う。洗濯物が均等に入ってないからなんだけど、ちょうどそんな感じ。なので、当然スムーズな着氷はできない。着氷と同時に毎回力技で修正することに。これは直に見たので、その迫力というか、インパクトは強烈だった。こんな無駄な力が入りまくりのジャンプを幾つも跳ぶのに、演技後そんなに息切れしてないんですよね。スタミナがあるみたいなので、もっといろいろ出来そうだ。


村主章枝選手
【SP】今回の全女子シングルSP・FSの中で、一番よい出来でした。スピードの村主が戻ってきた!という印象が持てて良い。衣装もマイナーチェンジして、より良い感じに。スケカナで見た時は、あんまりパっとしないなぁ、昨季のがずっと良かったのに、とか思ったりしたものだが。いい意味で裏切られて嬉しい。でも、まだ会心とまではいかないので、全日本か何かでぜひ最高の演技を。LSpがキャッチフット状態での回転数が足りなかったりでLv.1になったのと、3Fの減点が痛い。着氷は完璧だった3Fで何故減点なのか不思議だが、踏み切りのエッジに問題があったのか・・・。SlSt最後辺りの回し蹴りがカッコいい。本人談の通り、転ばない程度にもっと大きく見えるステップにしてもらいたい。女子初(?)SlStのLv.4を狙うのもいい。LSpのLv.改善も忘れずに。ジャッジの一人は、PEとINで8.25を出しているが(INについては、浅田選手にも8.25が付いている)、これはさすがに点の出すぎかと。ただジャッジについて言えば、一人だけやけに辛い人がいて、平均点を下げている要因になっている。それにしても、本当に何でも滑りこなしてくるなぁ。フィニッシュの表情がいいですね。
【FS】できとしては、まずまずかと。可もなく不可もなくというか。曲もだが、構成にマイナーチェンジがある。FSSpを後ろへ持ってきたので、順番の繰り上がった単独3Lzは前半部分の要素となり、ボーナスが付かなくなった。演技過多のスケカナと比べ、演技と要素との配分は良くなったように思う。後は、もう少し難しいジャンプを入れて欲しい。3+3として3Lz+3Tまたは3F+3Tと、2+2+2として2A+2T+2T(本当は2A+2T+2Loがいいんだけど・・・)の各1つずつ。あれだけ高い3Fを跳んでいるのだから、いける・・はず。この辺りは守りに入ってしまっているので、そろそろ実行に移してもらいたい。GPFは、いろいろ試せるいい大会だしね。まだまだSPよりも完成度が低いので、完全版は今季最後くらいまでお預けかな。髪型はスケカナより、ずっと演技内容に合ってて可愛いです。
【EX】今季パンツルックはEXで。SP、FS、EXとこれだけそれぞれ異なるタイプのプログラムをこなせるのは、今のところ彼女だけでしょう。毎度一番楽しみです。男を誘惑する女を演じてるそうですが、今回中野選手とよく被りますね。


ビアトリサ・リャン選手
【SP】競技中で髪を下ろしているのが印象的です。パンツルックに大きなピアス、コスチュームもいい。実際に見る彼女は、とても存在感ありました。スピンは回転速度があって気持ちいいです。足元を見るとグラグラなのに、スパライラルはLv.4の上にも加点あって謎だ。日本でいえば、澤田選手のポジションっぽいかな。元気溌剌〜?キャロル爺は遠い異国の地には、来なかったのですね。
【FS】こっちにまで伝わりそうなほど、緊張で硬かった。小柄な選手なのに、存在感はたっぷりあるので、これを生かしたプロにするといい気がする。アメリカも呆れるくらい選手いっぱいいますね。SP同様、本人に良くあった衣装だけど、黒が続くのはちょっと残念かな。あと、SlStでいきなりスピードとそれまでの元気の良さが、ダウンしないようにしたい。後半かなり疲れた感じでしたね。
【EX】FSとは完全に別人で、見ていて楽しい演技でした。何故これを演技で出さない〜。何故カットする〜。と思ったら、BSでは見れました。


中野友加里選手
【SP】ランビエール選手程でないにしろ、またしても大きなスピンのミスが。CCoSpがLv.4から一気にLv.1へ。さらに最後のFSSpもLv.3からLv.1へ(こっちは加点がかなりあるけどね)。今季はスピナーの厄年ならぬ厄季なんだろうか。LSpはさり気なくLv.2から加点を増やしてLv.4へ上げている。中国杯で回転不足をとられた最初のコンビネーションジャンプを成功させ、次は得意のスピン・・・と言う事で、少々油断が入ってしまったのかも。すぐ気持ちを入れ替えたようで、その後にあまり影響は出なかった。自分のBlogを読んでくれた訳ではないだろうが、簪が今回加わっており、よりいい感じに。よく見れば薄っすらと隈取りも。最初にスタスタ歩くマイムも、足を交差させて歩き、花魁風に。このプログラムは本当にいいですね。傑作ではないでしょうか。もっと「さゆり」になれるはずなので、全日本での演技が楽しみ。
【FS】何度見てもしっくりこない。理由は彼女が真面目で几帳面な素の性格のままに演じているからだと思う。子供が物語の扉(絵本?)を開けるところから始まり、シンデレラはもちろん、魔法使いに馬車に時計にと次々に演じていき、最後は「そして末永く幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」と読み手で終わる。何て忙しいシンデレラなんだろう。白雪姫ほどではないにしろ白痴美なキャラなはずが、しっかり者の賢いシンデレラになっているがために、何となく違和感があるのだと思う(SPの芸者はいろいろ考えるキャラなのでピッタリ)。演じる内容を詰め込みすぎなので、もう少し密度を薄くした方が、動きやすくなりそうだけどな。特に12時がきて魔法が次々に解けていく所は、うんと短くしたらよい。代わりにSpSqで表現される、王子との結婚式のパートをハイライトとして長くし、『幸せ』を強調する方が見映えが出てくるように思う。SPの差を埋めようと、力みすぎて最初の3Aがすっぽ抜け、その後も何かをずっと考えているような、そんな演技になってしまった。スピンも今ひとつで(それでも他選手より上手だが)、いつものキレがなく、回転速度も出ていない。
【EX】やっと、これが見たかった!という演技に。色をはじめ、衣装もFSよりずっといい。"とりあえず"だとは思うが、吹っ切れたような、流れと安定感のあるスケーティングだった。SP、FS合わせてスピンも最高に質がよい。これが競技に出ていれば・・・と思わずにはいられないが、そういうものなんでしょう。美しいプログラムだけど、昨季のEXと被るといえば被るため、欲を言えば違う趣のものも見てみたい。髪を下ろして、元気一杯に滑るのもいい気がする。


アリーナ・マルチノワ選手
【SP】SSがよく、スピードが結構あっていいです。リンクの使い方にムラのあるのが気になる。長身の選手という事もあって、大きく見えるのがいいですね。スピンが尽く流れているのがもったいない感じ。滑りきるのがまだ精一杯といった印象だが、選手層は薄くとも、ロシアにもいい若手のいる事を発見!ただ、どうせならもっと、若々しい選曲の方がいいと思うな。
【FS】今回一番の収穫は、この選手をしっかりと知ることができた事かもしれない。合同練習の中にあっても、スピード感のある、目の行く滑りをしていた。衣装といい、コストナー選手を彷彿とさせる姿の彼女は、日本人選手の表彰台独占の影に隠れる形となったものの、間違いなく近い内にトップに踊り出てくると見た。実際、プロトコルを見ても、SP、FSともよい点数を出している。ジャンプに安定感が出てきたら、すぐにでも名前が上がってくるだろう。実は彼女の演技前、何かがリンクに落ちていると観客が叫んでました。何事もなく進んだので良かったです(本人にも間違いなく聞こえていたはずだが、日本語なので伝わらないしね)。


浅田真央選手
【SP】質の高い軽やかなスケーティングを軸に、要素をブツ切れさせる事なく自然にランの中へ折り込み、長い手足を存分に生かしたパフォーマンスで見ていて本当に綺麗です。自身と相性のよい選曲や振付けを選ぶ事の重要性がよく分かる。本人も気持ち良さそうだし。何度かよろけたり、ほぼ音に合ってない(特に前半)等、スケアメほどの精彩はなかった。ファーストジャンプの崩れをカバーできる程の、セカンドループはやはり光る。首尾よくバンクーバーオリンピック出場権を得たら、SPにこれを使うといいかもしれない(多少手を入れる必要はあるだろうが)。
【FS】「ふーん」という感想ぐらいしか持てなかった。点が伸びた分、却って興冷めしたというか。ピーキーな値を出すための、点取りプログラムに変えてしまったので、当たり前といえば当たり前な結果だが・・・。過去最高得点を叩き出した割りに、国内外で評判がよろしくないのも頷ける。全体的に点の出すぎ感は否めないが、中でもPEとINは、スケアメの半分以下が妥当かなと思う。非常に能力の高い選手ではあるし、こういうのも有りだと思うが、つまらないのもまた事実である。衣装もウルトラマン風にフルモデルチェンジしてきた。前の方が良かったけど、もう曲は関係ないのでいいのかも。
【EX】いつも通り。それよりも、アンコールでやったSP(ほんのちょっとだけど)が良かった。いきなり雰囲気がガラっと変わる。SPがあの調子なので分かりにくいが、彼女のフィギュアは、「スポーツフィギュア」なんですね。


方丹選手
【SP】名前をパッと見たとき、「方舟」に見えてしょうがない。ので、今後彼女をノアと呼ぼう。ダンって日本では男性みたいだしね。終始笑顔なのはいいのだが、『ロミオとジュリエット』を使っているので、もう少し曲の解釈が欲しい。これでは単なるバックミュージックに。
【FS】一通りこなせるみたいだけど、全てが中途半端なので、垢抜けない印象なのが残念かな。SPとFSを通じて加点より減点が多いので、全体の完成度を上げれば、いい線いくのではないかと。SP6位、FS5位なので、あともう少しですね。


今回量が多いので、文字サイズを小さくしてみた。どっちが読みやすいだろうか。
また、「記号が分からない」とクレームを受けました(涙)。ので、下記にちょっと説明をのっけます。


TES : 総要素点のことで、ジャンプやスピンといった技の合計点となる
[ジャンプ]

[スピン]

  • LSp : レイバックスピン
  • FSSp : フライングシットスピン
  • CCoSp : 足替えコンビネーションスピン

[その他]


PCS : 総(プログラム)構成点のことで、下記5項目へ配点された合計点となる

  • SS(Skating Skills) : スケーティング技術
  • TR (Transitions/Linking Footwork and Movement) : 要素間のつなぎ
  • PE (Performance/Execution) : パフォーマンスと効果
  • CH (Choreography) : 振付け
  • IN (Interpretation) : 曲の解釈