氷上の人々


スケートを習い始めて半年が経ちます。幾つかのリンクにも行き、氷の上で「いろんな」事をしている人々を観察してきました。ネタが集まってきたので、そういった人たちを中心にして、披露したいと思います。当然自分も含まれる項目があるため、半分自虐ネタになってます。


【子供スケータ】
重心が低く、転ぶ事にあまり恐れがない、ノービス(小学生)ぐらいまでのレッスンを受けている子供たちを指す。リンクサイドにすごい目をした親(バカ)がいる事も多い。お金も時間も疲れも心配無用で羨ましい限りだが、宝クジよろしく自身の親に期限付きで夢を見させる役割も担う。大人スケータの小型版では決してない。
【選手(っぽい)スケータ】
中学生から二十台前半くらいまでの、明らかにスケート技術の高いスケータ。リンク上を風を起す程のスピードで駆け抜け、中央エリアに突入してジャンプを(たまには)ビシっと決める、子供スケータのその後の姿。親の願望のなれの果てである事も多い。親にとっては一番金銭的に負担の大きくなる層だが、本人にとっても技術の向上がままならないだけでなく、将来像も不安になっている難しい世代でもある。一般開放されてない時間に練習する事が多いため、(他に比べて)あまり見かけない。
【大人スケータ】
フィギュアの魔性に憑りつかれ、お金も時間も心も捧げる、周囲から”痛い”と思われるのも恐れない週末スケータ。昔習ってました組でない場合、「何でもっと早く始めなかったのだろう」と思う者が多いと思われる。子供スケータに対し、頭と年の功で対抗しようとする。「明日の仕事」と「疲労」が目下の敵。子供スケータにとっては、下手な癖に場所をとる痛いスケータ。元よりデブはあまりいない。子供スケータの大型版では決してない。
[女性大人スケータ]
男性大人スケータに比べ、タイプが豊富である。隣の奥様と一緒にオホホとごく普通の趣味の一つとする者、ちょっと頑張っているが女友達集団からは抜け出さない者、選手に憧れ突然思い出したように時間を割き始める者、流行も関係なく昔からずっと習い続ける者、子供が大きくなり昔を懐かしんでか再びやり始める者(昔習ってました組)、などなど。昔習ってました組は靴も古く、「あぁ、以前習った事、あるんだろうな」とすぐ分かる技術を持っているが、当時のヒラヒラ衣装のままなのが何とも・・・。この連中を除いては、概して男性大人スケータに比べ、ジャンプやスピンといった大技より美しいスケーティングを好む。と同時に、今ひとつ本気度が足りないため、彼らに比べて少々進歩がゆるい。ゆえに、子供スケータはもちろん、同じ大人スケータにも技術でよく抜かれる。「中々上手くならない」とボヤく前に、もう少し努力が欲しいところ。かといって、本気度の高い場合は、痛さが飛躍的に高くなり、痛し痒しである。
[男性大人スケータ]
選手に憧れ突然思い出したように習い始める者、我が道を行く者、何を思ったか再びやり始める者(昔習ってました組)の3タイプくらいに分けられる。概して女性大人スケータに比べ、ジャンプやスピンといった大技を好み、その分どことなく荒い。美しいスケーティングにも当然興味を持つが、3回に1回すら(散髪屋でなく)美容室へ行ってない様子など、本質的にかなり厳しそう。普段からオシャレにも気を使う事が、遠回りのようでいて、スケーティングにも影響のある事がイマイチ理解できていないように見える。我が道を行く者は、どのリンクにも一人はいる、名物の変わり者である。昔習ってました組には、女性大人スケータのようなビックリ衣装は見られないものの、何故か初老の教えたがりが多い。
【親(バカ)】
キッズの父親、母親、場合によってはその祖父母も指す。野球パパ等と同じく、ありもしない夢を我が子に託す。娘にヒラヒラの衣装を着せて喜んでいる内は良いが、レベルが上がってくると、リンクサイドからインストラクター顔負けの怒声であれこれと指導してくる。有名クラブに所属させ、有名インストラクターに師事させ、その一方でアルミホイルに包んだオムスビと水筒を持参して一緒にロビーで食べる。涙ぐましいが、本人たち他にやる事ないのかなと、大きなお世話な事を思ったりする。
【キッズ】
子供スケータの小集団。大人スケータがリンクの端で練習をしていると、我が物顔でやってきて場所を奪い取る。内容が真面目な練習ならまだ可愛いが、鬼ゴッコといった遊びであることも多い。スケートの前に習わせるものがあるだろうと、リンクサイドにいる親の顔を見るが、「こりゃダメだ」とがっかりする事になる。一方で、自分がちょうど練習しようとしていた技のお手本になる場合もあるなど、侮れない存在でもある。やはり、圧倒的に女の子が多い。
(注)某ブログ管理者様命名。気に入ったので、お借りしました。
【スライダーキッド】
親と一緒にレジャーを楽しみに来た、身の丈1mくらいまでのヘルメットを装備した子供。何をしているのか知らないが、単位時間当たりの転倒回数がものすごい。しかもその勢いのまま滑って来て、スライディングしてくる。非常に低い視点から思わぬ角度でやってくるため、ことにバック滑走の場合、避けるのが難しい。季節限定リンクによく見られる、危険な存在。男の子に多い。
【ホッケー野郎】
ホッケーの練習をする大人の男性、またはその小集団を指す。靴を見なくても、ホッケー野郎だと一目で分かる様相をしている。男性大人スケータと比べ、ゴツい・(小)デブ・こ汚い・チンピラ風・冬なのに日焼け・年齢を無視したダサい若者ファッション・品性のなさの内、1つあるいは複数を兼ね備える。リンク上における、フィギュアスケータ最大の敵。フィギュアスケートのそれより鋭い刃を持つ靴で、急ストップの練習を繰り返すため、彼らの使った後の氷はガタガタとなる。また、大人でも鬼ごっこのように猛スピードでトラックを周回し、スケータに怖い思いをさせる。リンクの相次ぐ閉鎖を考えるに必要な集団なのも分かっているが、氷の荒れ方から、利用料をフィギュアスケータの1.5〜2倍にしてもらいたいくらいである。ときにフィギュアの真似事もし、嬉し気にイーグルをやったりしている姿を見ると、背中に蹴りを入れて倒してやりたくなる。
【スピスケ】
スピードスケータ全般を指す。一部地域を除いて競技人口が少なく、また荒れた氷では練習にならないらしく営業開始1〜2時間くらいしか居ない事もあり、フィギュアスケータと共存しやすい。昔習ってました組として、以外におジイさんをよく見かける。ホッケーと違って滑走音があまりなく、また低姿勢であるため、サブマリンのように突然現れたように感じる事も。一般営業中はハーフサイズのものしか使えないらしいが、それでも見るからに最も凶器になりそうなブレードで、ちょっと怖い。
【インストラクター】
スケート技術を教える事を生業とし、象牙の塔のような、閉鎖的かつ特殊な空間を日常とする人々。リンク上にあっては、華麗な滑りで実に格好良い(岸に上がれば、おそらく通常人以下になると思われるが)。大人スケータにとって、理論的に教えてくれる人ほどよいと思われる。フィギュア人気のため、最近新車を購入したり、奥さんの服にブランド物を見ることが多くなったりしているかもしれない。年をとってくると、リンクの寒さと立ちっ放しの状態が堪えるだろうなと、ちょっと心配にもなる。いつも、ありがとうございます。
【監視員】
基本的にはプールのそれと同じ役割をする。その他怪我人を担架で運ぶ事とザンボニ(整氷車)の運転が主な仕事となる。自分が確認した限り、何故か必ずホッケー野郎が担当している。リンク上には一人いれば十分だと思うが、2人も3人もいる。デカい図体でフラフラと周回するため、非常に邪魔。一番やって欲しいのは、危険行為をするホッケー野郎を止める事なのだが、同胞であるためか注意するのを見た事がない。
【一般客】
一般の人、素人、(お)客、などとも言う。貸し靴を履き、ドタ足で滑る邪魔な人々。と、つい最近まで自分もそうだった癖に、いい気になって彼らとは違うという選民意識を持つ、大人スケータや子供スケータが使う言葉でもある。手すり磨きは壁と思えばいいのだが、親子や友達同士で手を繋ぎ合って滑ったり、トラック上を複数人で立ち止っていたりと、単に邪魔なだけでなく危険な事をしているのが分からない人も多い。リンク上にお菓子の包み紙を捨てたり、カメラを持ったまま滑ったり、驚くような行動も。あまりにも人数が多い時もあるので、入場制限をしてもいいと思うのだが・・・。


◆その他

フィギュアスケート
メディアに出てくる選手クラスの技を除けば、男女差や大人・子供の差が少ない、老若男女ができる生涯スポーツの1つ。屋内で行われる等々、非常に閉鎖的な世界で、一般に「場所」「道具の入手経路」「習得方法」は謎である。技術本にしても、野球やサッカーなどメジャーなものは本屋に平積みで売られているが、フィギュアに関しては信じがたい程少ない。鍛冶屋よろしく、インストラクターから口伝によって伝わっているような感じすら受ける。細かい所にも気を配るという、日本人の十八番が効力を発揮しやすいため、日本人に合っていると思われる。想像以上に姿勢が大事で、肩ズレや猫背の者は必ず苦労する。さらに初心者といえど、リズミカルに滑る事を要求されるため、多少は音楽素養もあった方がよい。
スケートリンク
経営形態は様々と思われるが、玄人が見るまでもなく経営が下手といわざるを得ないレジャー施設の代表。素人丸出しのサイト、行くのをためらいたくなるような恥ずかしい外観、教育のなってない職員、使いづらい設備(ロッカー、更衣室、etc)と、経営難に陥らない方がどうかしている。「スケートリンクの経営は難しい」というが、はっきり言って、それ以前の問題である。いずれにしても、運営費の削減は必要なので、技術開発とオーナの啓蒙が待たれる。
【季節限定リンク】
通年リンクと異なり、初夏から秋にかけてはプールであるものを、スケート施設として利用するもの。付近に住むスケータにとっては朗報だが、一般客も職員もあまりリンク慣れしていないため、通年リンクに比べて無秩序な場合が多い。
【大人向けスケート教室】
リンクによってはない場合もある。子供向けに比べ、間違いなくその内容に相当の差がある。「今日も楽しくお稽古しましょー」という公民館のサークルもどきから、「視線はまっすぐ腹筋を使って上体をブレないようにし、インエッジに踵より少し前の位置でしっかりのったまま、フリーレッグを・・・」という習う方も教える方も真剣そのものなものまで。ちなみに自分が通うのは後者のタイプで、直前の時間は殆ど選手の「6分間練習」のノリである。よくよく考えれば笑える話だが、皆”ウォーミングアップ”に余念がない。