大人は何故フィギュアが上達しにくいか 2


今回は恐怖について。一口に恐怖と言ってもいろいろある。


1. 氷という抵抗や摩擦の少ない床への不慣れ
普段はコンクリ・土・カーペットなどと擦れて動作が抑制されるから、止まるための動作を意識的にする事は殆どない。が、氷の上で止まったり減速したいなら、手で掴めるものすらなしに、都度自らそのための動作をする必要がある。上半身を支えに下半身でブレーキをかける、と言ってもいいかもしれない。


2. ブレードのついた靴を履いて運動する事の不慣れ
スケートはスケート靴を履いて氷上を滑るもの、という常識が大人にはしっかりとある。なので一緒くたに考えがちだが、1.と分離して考える必要がある。ブレードは前後に湾曲している上、インエッジかアウトエッジかのいずれかに乗るため、わずか2-3cmほどの刃の上に立ち続けなければいけない。氷の上でなくても十分難しい。


3. 体感スピードの違いが大きい
抵抗や摩擦がないためか、地上にいる時と、感じるスピードにかなりの差がある。ある程度滑れないと、想像しにくいと思う。見た目にすごくノロくても、本人にはとても早く感じられるから、必要なスピードを満たせない事が多い。「スピードを出すのはいいけど、止まれる自信がない」とか「転びそう」という心配が先に立ってしまい、そこから抜け出せない人も。


4. バックの動作が多い
こんな動き、日常、滅多にある訳ない。「人にぶつかりそう」というのもあるし、それでなくてもフラフラしているのに時々振り返らざるを得ないから、一瞬も気が抜けない。1.や2.もそうだが、技術以前に新しいものが向こうにあると頭で理解していても、そういった壁を乗り越えられず諦めてしまうケースが多い。


5. 自己防衛本能との闘い
物理学的に考えて大丈夫と分かっていても、それはそれとして頭の奥から本能が「危ないヤメロ」と言ってくる。仕事ぶりとしては至極最もだが、上達には邪魔になる。遠心力があるから安心?して、両腕を前にしたまま斜めにした体をさらに後ろへ倒し続けるといった事を、覚えていかなければいけないのだ。
※実際の処、本能とは言っても後天的なものが殆どだけどね。


こう書くと本当に非常識だよなぁ、と思わずにいられない。しかし、これがまた気持ち良くもあるのだ。