大人は何故フィギュアが上達しにくいか 1


スケートを習って、とても驚いた事の1つに、上半身の筋肉がすごく必要だという事がある。


それまではスポーツ写真を見て、「あの細っこい女子選手でも、やっぱりジャンプやスピンにはこんな凄い筋肉が必要なんだ」という程度の認識だった。

しかし、実際はそういった派手なエレメンツだけでなく、通常のスケーティングからして要求されるものだった。滑らない人でも比較的分かりやすいと思われるのがチェック時だ。例えばターンした後、背中などの筋肉を絞ってチェックしないと、延々とターン後のカーブを描き続けてしまう・・・というより制御不能になる。当然、次の動作に移れず直ぐそこで終わってしまう。動く->止める(チェック)->動く->止める(チェック)で流れは展開されるからだ。


背筋などは年を取るにつれ、嫌でも落ちていく。大人がフィギュアを習った際に、「できない」とか「できるまでに時間がかかる」、大きな原因の1つになっている。
腕や足の筋肉は、普段から運動しない者でもまだ意識しやすいが、背筋が落ちた事は感覚的に分かりにくい。姿勢維持には背筋以外も必要だけど、これ1つとって見ても、数値化されてさえピンと来にくいだろう。


大人が「姿勢が悪い」と言われたなら、子供や選手と同じ意味でとってはいけない。悲しいけれど、それ以前なのだ。誰かに動画を撮ってもらうと、ビックリするぐらい、前のめりや猫背になった自分がそこに写っているはずだ。


でも好きならヤルしかない。氷の魔力に取り憑かれてしまったなら。


* フィギュアでいう”チェック”とは、それまでの運動を終了させる動きの事を指す。場合によっては、他者への明確な明示も含む(代表的なのはジャンプ着氷後のもの。両腕を広げて後ろへスーッと滑って行くアレだ)。