大人は何故フィギュアが上達しにくいか 3


閉じられた冷たい空間は、大人に対し排他的である。


天井の高さやフェンス付近の作りによって、受ける大きさの感覚に多少の違いはあれ、どのリンクも概ね60x30mで作られている。


屋根付きが殆どだから、壁に囲まれた箱の中、下からシンシンと冷える場所に居続ける事になる。冷え性の人にはキツイに決まってるし、そうでない人でも少しジッとしていると夏でさえ体が震える。


外の景色もロクに見えない冷蔵庫みたいな環境下に、大人が長時間いた場合、知らず知らずの内にかなりのストレスを受けていると思う。片方1.5Kgくらいある靴を履いたまま、立ち続ける事であるし。殊にそれまであまり運動してこなかった者だと、せいぜい2時間が限度ではないだろうか。精神的にも、「外に出たい」とか「店にでも行きたい」という、”逃げ”のような要求が出てきても無理はない。


加えてそこで出来た友人と喋ったり、ドッコラショとベンチに腰を下して休みがち。そうしてさらに練習時間は少なくなる。土日のどちらかだけのリンク通いだとすると、1ヵ月単位で見ても滑ってる時間は大した長さにならないから、そもそも上達するはずもない。「やればやる程上手くなる」と実感できるのは、せいぜい3ヵ月といった処なので、半年も続かない人はザラだ。「きっと華麗にクルクル回れるようになるに違いない」といった妄想も、この頃には終わってる。


大人は子供と違って外に楽しみがたくさんあるから、いろんな誘惑に負けて?、1週とか2週とかスキップしてしまう事もよくある。何週間ぶりのスケートは、上達のためでなく、元に戻すためだけで終わってしまう。


自動的に落ちていく筋力、非日常的な物理環境への恐怖、そして冷たい閉鎖空間・・・、大人を取り巻く練習環境は本当に厳しい。うーむ。半年とか1年を越えてまだ続ける者は、はっきり言ってマゾの変人だと思う。<-お前だよ