バンクーバ五輪 女子シングル


待ちに待ったお祭りもついに終わりました。選手の皆さん、お疲れ様でした。そして表彰台組の皆さんオメデトウ!興奮が一度冷めたトコロで感想を。


[メダル] キム・ヨナ選手
今回の全オリンピック選手の中でも1、2を争うプレッシャーだったろうに、アッパレとしかいいようがない出来だった。成功率の高さ・進入スピード・空中姿勢・飛距離(7.5mとか、カンガルーか)・着氷後の流れ、とセカンドトゥループにおいて、歴代最高の3+3ジャンパーだろう。
SPはよく持ちこたえたなという印象で(調子悪そうだったもんねー)、本人比としては迫力不足でよろしくなく、しかし他の選手比でそれでもミスしないのはさすがだった。でFSだが・・・。
以前から薄々思ってはいたけれど、今回珍しくミスのなかった(シニア初だっけ?)のを見た事で、ハッキリと他の選手とは圧倒的な差のある選手なんだと分かった。精神と肉体がフルコントロールされ、スピードのアップダウンを精緻に調整しているのが伝わってきてゾクゾクした。2009年の世界選手権を思うと絶好調ではないだろうに、こんな演技、今後見れるんだろうかと思う程に。実況アナが「水が流れるように」と言っていたが、本当にその通りでしたね。作品完成度、技術、精神力、全てで勝っており、今季一番好きなプログラムという事もあって嬉しかった。まだ全然言い足りないけど、とりあえずここまで。


[メダル] 浅田 真央選手
本格的にシニアに上がった2006-2007シーズン以降、最高のSPだった。それだけに、曲や衣装の合ってないのが惜しい。彼女は残念ながら感性を持ち合わせていないようだが、やりようによっては、今回のようにかなりいい線に持っていけると分かったのが最大の収穫に感じた。トゥ系ジャンプをほぼ運動能力のみで跳んでいる問題、スピードの遅さ、そして作品完成度の低さについて、20代でどう取り組むかが課題かな。


[メダル] ジョアニー・ロシェット選手
SPはコンビネーションジャンプ前のフォアクロスでいきなり躓き、見てるこっちがビクっとしたが、きれいにまとめてきた。衣装、前も後ろも非常にステキなんだけど、同時にとても重そうだ。FSは着氷のよろめきが多いながら7つもトリプルジャンプを跳ぶ、ナイスファイトだった。5種類のジャンプを持つ強みを発揮できているし、エッジエラーもないし、五輪に向けての数年越しで実施してきた計画が実ったという感じ。一見地味だけど「チェック姿勢がきれい」という良いトコロもちゃんとアピールしている。多分一杯一杯だからなんだろうけど、ほぼ最初から最後までせわしないというか必死なのが前面に出てしまっている、そういうのが無くなればもっと良くなりそう。



その他の日本人選手について。


安藤 美姫選手
年齢やオリンピック経験者という事から、一番期待していただけに、正直最もガッカリだった。五輪でいきなりジャンプの難度を上げるには、彼女はもう若くなかったと思う。シーズン初めから安全策に走り過ぎた結果、本人でなくてもできそうな構成にまで平凡化してしまった。3S+2Aのシークエンスなんて見たくなかったよ。他にも、衣装、編曲、細かい振り付けといった小手先にばかり神経が行き過ぎ。FSでフェンスの色と衣装の色が似ていて、存在がボンヤリする事になったのは、今回の出来を象徴していたように思う。モロゾフコーチは最近出した著書の中で、「日本人選手はその勤勉さからトップグループまではよく行くが、そこからスペシャルなもの持って一番になるまではなりがたい」と言っていた。分かっていながらどうして、こんな印象にさえ残りずらい結果にさせてしまったのか。3Lz+3Loや2A+3Tを返して欲しい。


鈴木 明子選手
ある意味、日本3人の中で最もよい結果を出した選手のように感じた。少ない手持ちの中から最上のものをかき集め、ルールブックを良く理解し、そして何がなんでも一花咲かせてやる!という意気込みがあった。そしてそれらが、とてもよく伝わってきた。ベテランはこうやるんだよ、という見本というか誰より賢かった(オフアイスでの痛い発言はさておき)。これぐらいのハングリーさが、安藤選手や他競技で呑気なコメントを出してる連中に欲しかったんだよなぁ。振付師になりたいらしいが、ジャンプやスピンといったスポットコーチやトレーナをまとめる総合コーチに向いてるかもしれない。


次は世界選手権。キム・ヨナ選手の2連覇と今季全勝なるか、が見所かな。