今季お気に入りのプログラム 2


前回の続き。世界選手権もとっくに終わったのに、今更書いてみる。今回は男子シングルについて。


男子シングルSP
1. アルテム・ボロデュリン『カリンカ
ロシア人がロシア民謡やってる訳だけど、それにしても良く合っていた。はっきりした曲にロシア男子特有の力強い3Aやポジションのくっきりしたスピンもマッチしていて、とても隙の少ないプログラムに仕上がっている。衣装も凝った刺繍など装飾が美しい。下がジーンズっぽいのに、やはり意匠があるせいか全然汚く見えない。曲との同調性といい、男子SPの中でも一番いいくらいの出来かと。作品全体も明るくてオリンピックにも合ってる。


2. ジョニー・ウィアー『I LOVE YOU, I HATE YOU』
1位とあまり差がないのだけど、衣装で比べると上の方がはっきり綺麗なので。
バレリーナのような恵まれた体躯から生み出す動きに、何故か演歌調な曲をミックスさせた、当人の持つリズムや性質とよくシンクロさせた作品だったと思う。こういうの見ると、プロだなーと思いますね。さすが今をときめく振付師、デヴィッド・ウィルソン氏。「本人にしか滑れない」プログラムの見本でしょう。本人が自力で緩急作れないのを補っているのもさすが。


3.ブライアン・ジュベール『ライズ』
昨季からも持ち越しプロではあるが。五輪があるし、FS前のSPで明るい曲を持ってくるのは良いと思う。結果は残念ながら振るわなかったが。遊びの部分もあって面白いけれど、もう少しつなぎを濃くするとか両足滑走で流しながら以外にも上半身の振りを入れるとか、このレベルの選手だと求めたくもなる部分も一方である。審判によっては手抜きにすら見えたかもしれない。


その他、パトリック・チャン選手の『タンゴ・デ・ロス・エクシラドス』もそこそこ良いが、一定調子なままただひたすら動き続けるのがね。終わったらまず「お疲れ様」と言いたくなるのは、フィギュアなのにスマートではないかなと。あと同じカナダのケヴィン・レイノルズ選手が昨季から急激に良くなっているので、来季も期待大だ。こんなに化けるとは。
パオロ・バッキーニ選手も中々良かった。純正イタリア選手である事にまず「ほおー」と思ったものだったけど、法学部主席卒業とか非常に優秀な人なんですね。そういやMr.ビーンことローワン・アトキンソンさんと通じるものがあるような、ないような。

番外としてエヴァン・ライサチェック選手の『火の鳥』について。特に良いとも好きだとも思わないが、感性があまりなく華やかさにも欠けるスケーターを、無理やり派手派手しく見せかけるのは振付師の腕だなと思った。


男子シングルFS
1. トマシュ・ベルネルゴッドファーザー
未完すぎるけど、まぁこれかなと。エリック杯で初めて見た時、これはマスターピースになりそうだ!と思ったものだ・・・。衣装もよく合っていたし、シームレスで見ていて気持ちの良いスケーティングも堪能できる(はずの)プログラムだった。五輪という意味でも良い。スタミナのなさやミスの多さもだが、シットスピンの汚さも何とかして欲しい。夢から醒める。


2. 織田信成チャップリンメドレー』
エリック杯で見た時は、一人飛び抜けて完成度が高く、五輪に向けて本当に楽しみだった。未だにジュニアっぽいという弱点を逆用、かつジャンプ後の伸びの良さを生かした良い振り付けだった。が、例年の如くシーズン後半になるにしたがって調子も完成度も落ちてしまった。自身の感情を乗せる、という事が前季の世界選手権FSでチラっと見れた気がしたのだけどな。


3. ファビエル・フェルナンデス『パイレーツ・オブ・カリビアン
今季モロゾフ振付師の男子FSは当たり年だったのか。この曲を使う選手は近年多いけど、一番嵌っていた(ハッキリ言って、女子には合わないと思うし)。大航海時代に活躍した国の子孫なせいか、他の選手には出せない雰囲気があった。ボロデュリン選手といい、男子は特に、本人の生まれ育った国に関連した作品だといい味を出しやすいのかも。


サミュエル・コンテスティ選手の『シクリアダス/カチャルパヤ』も結構良かった。昨季もだけど、割とどれも統一感と味のある作品を用意してくるなと思う。顔も演技も濃いので、好き嫌いはハッキリ分かれそうだが。これも他選手との差別化の意味で良かった。さすがに奥さんという、よーく知った振付師が時間かけて作ってるだけあって、本人が無理なく演じている感じを強く受ける。以前書いたように、プログラム全体で見ると若干インパクトに欠けるけど。


長くなったので、日本人選手については次回に。