ソチ五輪 男子シングルFS


五輪としておよそ最悪の試合でした。金メダリストになった羽生選手。日本人が金メダルと聞けば嬉しいですが、フィギュアが好きな者としては祝福できません。精神力の弱い上位陣にもがっかりだ。

以前から、五輪や世界選手権については、金メダリストに条件付けをした方が良いと考えていた。例えば、「その試合の獲得点最上位者(つまり1位)」が「ショートとフリーいずれも転倒なし」かつ「男子は最低2回の4回転、女子は3+3と最低1つのルッツ、の成功」を満たさなければならない、といったもの。4回転を入れれば良い訳でもないし、予定や構成上だけの妄想もいらない。

本大会は”金メダリスト該当者なし”、銀メダリスト以下で良かったと思います。今回の状況、トリノ五輪の女子シングルに似てもいる。やはり上位陣は軒並みフリーで失敗。この時の金メダリストは荒川さんでしたが、これもおかしかったと未だに思う。2回もミスを重ね、セカンドトリプルが1つもない上に単独2回転のジャンプがある、と技術的に低い内容だったからです。

日本人選手は芸術(点)に対し健気に技術(点)で戦っているような論調で、解説をする元選手のスケート関係者等も、その誤解を放置どころか助長させています。他国の選手たちを愚弄する前に、足元を見てはどうでしょうか。


今日の英語: 解説
commentary
first person commentary(解説の第一人者)

ソチ五輪 男子シングルSP

波乱の展開があまりない結果に。ただ、(露)プルシェンコ選手は残念でした。せめて、少しでも腰の具合が軽ければと思います。

1位となった羽生選手と2位のチャン選手を分けたのは、トリプルアクセルでした。盤石にしているのと弱点であるのとの差、これに尽きる。一方がコーチ騒動を起こしている間に、もう一方は得点源のジャンプ構成で武装強化した。

滑りはさすがに相当な差があるかと。チャン選手と(米)アボット選手辺りがいつもながら上手いなと思うけれど、今回は(チェコ)ヴェルネル選手が一番良かったです。重心の低い、アイスダンサーにも見ないような深いエッジ、加えて上半身とも連動するしなやかさ。見ていて気持ちのいい、何度も見たいようなスケートでした。あと(米)ブラウン選手、隙がなく上手いですね。でもデービス・ホワイト組同様、見ていてあんまり面白くない。アメリカの選手にはこういうタイプ多いなあ。

話戻して、金と銀のメダルに上の2人がかなり近づいた訳ですが、男子競技なのでまだ分からない。解説が時折言う「実力はあるのに発揮できなかった」などという現象は存在しない。精神力も実力の内だ。さて誰が勝つか。


今日の英語:
as firm as a rock
似たような言い回しがあるのですね

ソチ五輪 フィギュア団体6

続いてペア。解説などで、高橋・木原組を「結成から1年ですが、よくここまで云々」と美談じみた言い方がありました。放送用として考えれば特に意義はないのですが、少し大仰だと思います。懐疑的だと言ってもいい。

2010年、イルハンというトルコの元サッカー選手がソチ五輪を目指すとかで、いきなりペアを始めるというニュースがあった。出場権の獲得に失敗したが、一応形にはできたようだ。三十代後半の未経験者がわずか3年でだ。

シングルの選手がペアに競技を転向するというのは別段珍しくはない。アイスダンスでも同じ事を聞いたが、二人の同調性を合わせるのも含めると、「3年」が最低必要な期間という。どの辺りのレベルに対してかは不明だけれど、それなりには試合の中で戦う事を想定しているはず。何を言いたいかと言うと、本気を出せば、強化は思うほど難しくはないという事だ。後はペアやアイスダンスへの転向について、条件を思いきり優遇すればいい。特にペア用の男性は他競技から誘うのも良し。お金をかける、というのはこう言う事をいうものだ。


話戻して、個人競技の方のペアは既に結果が出ました。団体競技がロシア選手の点数吊り上げ用にならない事を望みます。


今日の英語 : 転向する
shift to

ソチ五輪 フィギュア団体5


女子シングルについてもう少し。

(伊)コストナー選手、老けましたね・・・。伸びがあんまりないというか、全体に小さいスケートだった。数年前から思ってたけど、滑りにもそれがはっきりと現れていて、何だかセピア色がかって見えた。何年も知ってる選手のこういう姿を見るのは、やっぱり切ない。


それはさておき、ショートは変更らしい。彼女は世界選手権の金メダルも手にしたベテランにもかかわらず、『アヴェ・マリア』なんていう、今更”誰がやっても大体こんな感じ”なプログラムに。このレベルかつ年齢の選手なら、仮に当初プログラムと噛み合ってなくても、自分が作ったイメージなりをジャッジ含めて見る人全員に納得させるぐらいでないと。こういうのは中堅以下向けだ(斬新なアイデアを入れるとかなら別だけど)。自身がするならEXかアイスショーの中でにして欲しかった。日本の選手もひどいものだが、衣装やプログラムを簡単に捨てるというのは、力のない証拠だと思います。


あー、それと日本のお二人さん。個人競技の方、少なくとも現時点では入賞(8位以内)狙いって感じですね。昨日ソチ入りした真打ちを拝んでみてはどうでしょう。あちらは無我の境地に入り、後光まで射すようになっちゃいましたよ(彼女クリスチャンだけど、比喩だからまあいいや)。

今日の英語 : ベテラン
expert("veteran"でも通じるみたいだけど、退役した兵士とか海兵を指す場合の方が、イギリス英語圏では多いようだ)

ソチ五輪 フィギュア団体4


シングル女子では開催国の(露)ユリア・リプニツカヤ選手が大活躍しました。ロシアは未だ女子シングル金メダルなし。団体金にも先を越されたのは興味深い。


例によって”体型変化前は出来る”タイプに見えるので、年齢制限ギリギリで五輪に出場できたのは強運かと。さらにこの年齢をプログラムにも利用、”かわいそうな子供”をモチーフに。ただ、ショートもフリーもというのは、さすがにあざと過ぎて両方見ると白ける(最初と最後を同じ演技にしてマラソンみたいに折り返す構成なのも同じ)。小利口な少女が使う常套手段を起用した単純な戦略だが、ロリコンやら思考が単純な人から「これはすごい表現(力)だ」とか真顔で言ってそう。


今回「お!」、と思ったのは(伊)ヴァレンチナ・マルケイ選手。フリーは正に会心の出来、思わず画面に向かって拍手してしまった(残念ながら演技自体はそう面白くもなかったけど)。垂直方向への跳躍力に優れるがその後の処理が悪い、換言して「入りは早くて後が遅い」ため転倒多かったのが、本試合では良くタイミング合ったようだ。このタイプの特徴として、2番目や3番目のジャンプに入るまでが遅くてドンくさい印象というのがある(ゲデヴァニシヴィリ選手がこの典型)。ちなみにその逆の「入りは遅くて後が早い」典型は荒川さん。この手のスケーターは全体に間延びして見えやすい(”もっさり”という表現もよく聞く)。


今日の英語 : 体型変化
body habitus changes

ソチ五輪 フィギュア団体3


アイスダンスに注目してみると、ショートダンスの課題であるフィンステップの雰囲気が最もよく出ていた(仏)ペシャラ・ブルザ組や、スピーディな(伊)カッペリーニ・ラノッテ組が良かったです。


1位は(米)デービス・ホワイト組。練習量の多さも伺える隙の少なさなど、納得の順位で上手いなと思う。一方、相変わらず品の無いつまらない組だとも思う。特にショートダンスの女性・・・。役といい衣装を始めとした見た目といい、悪趣味なギャグにしか見えない。そして(加)バーチュー・モイア組、こんなに下手だったっけ?まだピークを越すような年齢でないはず。


こういう風に10組程度で下位からトップレベルまで一気に見ると、リード姉弟組の問題がよりはっきり分かりますね。まず何と言ってもトロい。要素前後で大きくもたつくのはもちろん、1つ1つのターンやステップに入るまでも長い。しょっちゅうケガをしていたり、陸上でのトレーニング不足やその内容に疑惑を持たざるを得ない。1位の組に象徴されるように、筋力や瞬発力をもっと付けない限り、上に行くのは無理だと思います。


今日の英語 : 瞬発力
instantaneous force(instantaneous deathなら即死)

ソチ五輪 フィギュア団体2


初代優勝国はロシア。男女シングルの点の付け方はやり過ぎだと思いますが、まあどちらにせよ、日本は表彰台にかすりもしませんでした。


敗因は言うまでもなく、アイスダンスとペアの弱さ。最低でも団体競技の話が本格化してきた辺りからテコ入れすべき処を、いつまでもシングルにかまけ過ぎた結果です。これまで団体競技の試合は全て日本で開催、良いようにお財布にされただけで銅メダルすらとれず、とは滑稽でしかない。


「チームをまとめるため」といった理由で五輪代表にした高橋選手は不出場でした。いつ決定し、なぜ補欠選手と交代させなかったのか?この件と合わせて、日本スケート連盟はきちんと説明すべきだと考えます。



今日の英語:敗因
the cause of (one's) defeat