ソチ五輪 女子シングルFS3

日本3選手について。

鈴木選手、パワーダウンですね。単に滑って跳んだ、の印象しかないです。第3グループの顔触れを見ると、圧倒的なレベルのはずなのに、特に違和感もないまま終了。前回五輪と同じ入賞ギリギリの8位に。なぜ1つでも上げることが出来なかったのか?自己分析結果を知りたいです。取り組んできたセカンドトリプルは、結局3T+3Tでも2A+3Tでも決まらず。記者は師弟関係とかあってもなくてもいい事を書く前に、この辺りを真っ先に記事にすべきでは。

村上選手、スケーティングにしろジャンプにしろ、強烈なクセがやっぱり足を引っ張ってますね。会心位の出来でないと悪目立ちしすぎる。トゥジャンプのスロー再生は正直ちょっと見ていられない。山田コーチは「個性」という事で直さない方針らしいですが、結局それで損するのはその選手自身なのを見ても、考えは変わらないのでしょうか。パワー・瞬発力・体力・柔軟性・感性、と際だったものはないものの、全て平均的にそこそこ高いものを持っている。本来、今頃全体に底上げできるはずなのに、もったいないなと思います。

浅田選手、周りのお膳立てと擁護の中で過ごしてきて、すっかり3流選手に成り果てましたね。最終グループの隣ですらない場所でようやく滑れただけなのに、ロバの耳を頭に付けてご満悦とは。独り運動会は楽しかったようですね。でも8トリプル試行は失敗、5トリプルですよ。


これが世界選手権なら、、6(位)+8(位)=14で2枠、と2軍国へ転落(最大3枠には「上位2人の合計が13以下」である事が必要)。日本女子の衰退ぶりがはっきりした大会にもなりました。

ソチ五輪 女子シングルFS2

最終グループのもう3人について。

ゴールド選手、ジャンプ時に両脇がかなり締まえるので、大きな鉛筆が跳んでいるように見える。回転効率も高そう。肩甲骨の広がりがいいのと関係あるのでしょうか。全体にキレイでオルゴール人形のようだけれど、箔とか迫力が加わると、演技に深みが出て見応えあるものになるだろうなと思いました。

リプニツカヤ選手、演技終了後、観客の声援に答える時の少し困ったような笑顔が、何ともいえなかったです。解説は「殆ど表情を変えない」と言っていたけれど、むしろ逆で、表情豊かだと思う。来季以降、それを生かしたプログラムを見たい。

ワグナー選手、迫力のある、輪郭のはっきりした演技でした。「絶対に転ぶものか」、という声が聞こえてきそうな程の気合い。米国若手セットの末席のようにしてシニアへ上がってきて、結局一番上に行っただけあります。一方、リンクの使い方が小さいように見えた。PCSが抑えられた原因の1つだと思う。


しかしニコルさん。順調に”カナダのタラソワ”になっていってますね、見た目が。

ソチ五輪 女子シングルFS

白熱の最終グループ、これが全てでした。

こんな良い大会は久しぶりではないでしょうか。それぞれ異なる目標や目的を持った様々な国の選手たちが、同じ時間同じ地にほんの一時集い競い合う。当たり前の事なんだけれども、本質だけが剥き身になったそれを、万感の思いを持って見ていました。

ロシアはついに女子シングルの金メダルを獲得、まだ17歳のソトニコワ選手です。点などについては後日気が向いたら書くとして、若さと生命力に溢れた、力強い演技でした。

キム選手、もう圧倒的に上手い。3つ目のジャンプ後からその次のジャンプまでの間といい、体の隅々に至るまで、痺れるような高いコントロール力を事もなげに発揮。特に体幹部分については、そのいくつもある筋肉1つ1つを意識的に動かしているようにしか見えない。職人技、超絶技巧とでも言うのですかね。

コストナー選手、初めて両方大きなミスのない試合を見た気がします。フリップジャンプは一番だったと思います。空中に浮いているみたいでした。そして何と言っても、フリーレッグのさばき方が本当に美しい。西欧選手の面目躍如ですね。


トリノバンクーバー時代とソチ時代以降との、まさにその世代交代となる演技を披露した6人。彼女たちに心から拍手を。

ソチ五輪 女子シングルSP2

鈴木選手、バンクーバー五輪の時より精神力が落ちている感じですね。年齢のハンディをカバー出来ていないどころか、全体としてパワー不足に映りました。「心を込めて(でしたっけ?)」に意識を向けすぎていたようにも見える。

村上選手、トリプルフリップは残念でした。結構3T+3Tの後に、そのジャンプかダブルアクセルのいずれかをミスしている気がします。ただインタビューではいい顔をしていたので、フリーの牛蒡抜きに期待ですね。

浅田選手、コンビネーションジャンプを最後に持ってきていましたね。そもそもリカバリーできない構成って一体・・・。


以前少し書いたエントリーの1つ、TESとPCSについて。ショートの採点結果を見てみると、バランスを最も欠いているのは浅田選手でした。TES=22.63点に対しPCS=33.88点。その差11以上とダントツです。2番目であるヘルゲション選手の5.18と比べても、なお倍以上ある(今回平均して約1.45ほどTESよりPCSの方が低く、首位から3位まで全員TESの方が上)。技術点と言えるTES単体で見ると27位、完全に予選落ち(25位以下)です。しかし全体では16位。さすがにこのPCS(4位)は問題視されるでしょう。

ショートとフリー、女子と男子の差があるとはいえ、技術力に最も問題があるのはいずれも日本人選手でした。


今日の英語: 牛蒡抜き
overtake / in a single spurt

ソチ五輪 女子シングルSP

首位の(韓国)キム選手を、僅差で(露)ソトニコワ選手とコストナー選手が追う展開に。精彩を欠いたキム選手と会心の出来のコストナー選手で、ようやく勝負になるんだな、と点を見るまでもなく改めてキム選手の能力の高さに驚きました。

キム選手の6分間練習を見ると、周りの選手たちのゆっくりなスピード感が、いつもの調子を狂わせているようにも見えました。とは言え手堅くまとめたのは流石の一言。フリーの方ではいつもの環境に戻る事もあって、点も出てくるでしょうが、それ以上に『アディオス・ノニーノ』の完成形を期待したいです。

その他、(加)デールマン選手の『Cancion Triste』も中々良いなと思いました。つなぎの工夫はもちろん、本人の若さや生命力溢れる感じが。もう一人、マルケイ選手の『帰れソレントへ』も良い。同じ国の作曲者による作品だと、他国の人間ではその深淵までは分からずとも、異国情緒を味わえます。

ロシアのもう一人が上位に。リプニツカヤ選手同様、癖の強いジャンプと個性的なスピンを持つのですが、華やかなこのソトニコワ選手の方が自分は見ていて楽しいです。


今日の英語: 華やかな
spectacular(うーん、しっくりくるのがない)

ソチ五輪 日本の報道

アナウンサーからスポーツジャーナリストに至るまで(自称批評家等、芸能人は論外)、ほぼ低能か無能のいずれか、あるいはその両方に該当するという現在。フィギュアスケートを例に、報道の問題について少し書いてみたいと思います。

「アマチュア(スポーツ選手)」というのは今や完全に形骸化。出資されている選手絡みとなるとマスコミの殆どは機能不全に。それが続くせいでしょうか。その影に隠れるようになっていた報道能力の低下もまた、ソチ五輪では特に露わとなっています。幼稚、大袈裟、不明瞭、不正確、妄言、偽情報(嘘)、などなど。

一方、技術的説明でそれらをサポートするはずの、元フィギュアスケート選手の解説陣も酷いものです。表側ほどすっかりコウモリかミスリード屋になっている上、最近ではワタシもボクも、とその昔の中堅以下だった選手たちまで小遣い稼ぎをしに大法螺吹きをする始末。厚顔無恥、という言葉をご存じか心配になります。

浅田選手を軸に作ったこのビジネスモデルですが、公式練習の情報1つ、まるで同姓同名が3人はいるかのように情報が錯綜。”当人の実力や個性”と”設定イメージ”に相当な乖離があるのに、利害関係者らが本当の事を言う代わりに取り繕い、虚飾にまみれさせてきた結果です。もはやそのひと塊が妖怪じみてさえ見える。善意の愚者多きこの”日本村”にあっても、こういう異常な状況を取り上げる事のできる、本物の報道が待たれます。



今日の英語: こうもり(八方美人)
a person who tries to please everybody

ソチ五輪 男子シングルFS2


TESとPCSについても少し。TESはジャンプやスピンといった要素の合計、PCSは「スケーティング技術」と「要素間をつなぐ技術」および芸術性3項目の合計で、本来両者を同じ位に獲得するバランスの良さが求められます。

フリーの採点結果を見てみると、バランスを最も欠いているのは高橋選手であると分かります。TES=73.27点に対しPCS=91.00。実に18近い開きがあります(今回平均して約3.26ほどTESよりPCSの方が高く、表彰台組ではチャン選手の7.30が最大)。技術点と言えるTES単体で見ると13位、完全に入賞圏外(9位以下)です。しかし全体では6位。PCSが最終順位を補完する形となっています。

このPCSには致命的とも言える欠陥があります。上述の”芸術性”は「演技力」「振り付け」「曲の解釈」と曖昧な上、項目には全く記載のない「実績」などグレーなものが「スケーティング技術」などに加味されるからです。TESは絶対評価でPCSが事実上の相対評価である事も、分かりにくさを助長しています。

TESとPCSの差に上限を設ける事(TESより10を越える分のPCSは切り捨てる等)、PCSを”「スケーティング技術」と「要素間をつなぐ技術」”および”芸術性3項目”の2つに分離する事、を提案したいです。バランスの良い演技の評価向上と、第三者がパッと見てもう少しは分かりやすい採点になる事、が期待されると考えます。


今日の英語: 上限を設ける
set(またはplace) an upper limit